先日ある会合で、非行や犯罪について話をする機会をいただきました。話題は、集団万引きのことでした。ある中学校で芋ずる式に集団万引きが発覚しました。教育現場では苦慮する行為です。 私も保護観察官、保護司の経験で、良く耳にする非行現象です。万引きのみで保護観察や少年院送致の審判が出ることは余りありませんが、いわゆる少年非行の初期・入り口の行為です。
これら初期非行は、よくいわれるように罪の意識がほとんどありません。私は「ファッション、ムード、その場の流れ」で、いつのまにかで万引きをしているのではないか、と考えています。
皆がやっているから、見つからなければそれでよい、勇気を試したい等々が彼らの意識にありはしないか、と心配しています。
大麻使用の少年を保護観察対象者として関わった経験があります。いわゆる薬物使用で、言葉だけで見ればレベルが進んだ非行内容ですが、彼自身はそれほど大それたことをした意識がほとんどありませんでした。彼の周りでそれが流行っていたそうです。その場の流れで大麻に手を出した、皆がやっているから使った行為のように見られました。
非行の初期レベルの自転車盗、無免許でバイクに乗る、バイク盗などもそうではないかと考えます。
少年非行を担当する警察官のお話をお聞きすることがありました。「万引きは罪です」等の言葉はしょっちゅう聞かされていますが、一歩進んだ話を中学生にするそうです。それは、万引きが見つかり、店の人が追いかけてくる、君たちは捕まらないように逃げる、腕を捕まえられるがふりほどいて逃げる、ふりほどいたことで店の人が転倒する、転倒して頭を打って怪我をする、場合に寄れば死去する等々です。そうなれば万引きの窃盗罪に加えて、傷害罪、時には殺人罪にもなる可能性があることを、法律や刑法の言葉を駆使して話をするそうです。何年間か、繰り返し中学校を訪問して講話を続けると、明らかに万引きが減少したそうです。
聞き慣れた説教より、情緒的に迫るより、客観的な法律用語、刑法用語で子どもに迫るのです。対策の一つではないかと頷ける話でした。
臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一
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