マスコミでも報道されていますが、福井県の中学校で生徒が飛び降り自殺をした事件がありました。報道によりますと、該当の生徒は担任、副担任から強い叱責を執拗に受けていたそうです。身震いがする程、その生徒が過呼吸を起こすほどの度を超えた叱責のようでした。
スクールカウンセラー時の経験ですが、ある中学校で不登校になった男子生徒がおり、相談を受けたことがあります。その生徒は運動部に所属しており、その部は市内でもいつも強いことで有名でした。その成績を維持しようとするのは、部活のメンバーや指導の顧問の願いで、練習も熱心でした。そのため練習では励ましや叱責の大声が飛び交います。不登校になった男子生徒はどちらかといえば、優しく温和しくまた真面目で内向的な性格の持ち主で、一生懸命に応えようと努力をしていました。ミスを先輩からも叱られることが多くありました。そんなことが重なり、気分が落ち込み不登校傾向になりました。
運動系の部活には、よくある光景ですがその大声の励まし、叱責が叱咤激励として頑張れる子と、その大声で萎縮する子がいるのです。運動系部活では当たり前のこととして日常的に行われていますが、指導者がそれぞれの生徒の性格的特徴を把握して、練習中はできなくても終了後「今日は、よく頑張っとったなぁ」「あの時パスは上手やったで」等のフォローがあれば、次の日も頑張れるはずです。
今回の福井のケースでは、担任発言として「強い叱責にも応えてくれると思っていた」、とありました。自殺して生徒さんの性格的特徴は分かりまねますが、強い叱責イコール奮起につながるとはあまりにも単純な発想です。その上、多くの生徒が見ている中、また職員室での場面もあったようです。自意識が芽生えている思春期には耐えられない屈辱にもつながります。
教育では一人ひとりに対応する、個を重視する、とよく言われますがそれぞれの子の性格的特徴の理解と、大人側からの行動(叱責や励まし等)後、その生徒がどんな受け止め方をしているのかの把握が必要です。
臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一
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久しぶりにブログを読ませていただきました。納得するような、そして、考えさせられるような、大変、いいことが書かれていました。ありがとうございました。