子どもは、成長に従って視覚、聴覚等の感覚機能が発達して、周りの様々な事象を捉えます。捉えたものを指さしや、言語で周りに知らせます。その繰り返しが周辺の人、特に親とのコミュニケーションにつながります。捉えたものを周りに知らせたいのは、子どもなりに心を動かしたものでしょう。言い換えれば感動したものです。それに応えることにより、言葉の発達や気持ちのつながり、情緒の発達にも関係します。
先日、散歩をしていたとき、2,3歳くらいの子どもを連れた母子に出会いました。子どもが数メートルほど先を歩いていました。曲がり角で犬を連れた人に子どもが出会い、「いぬ、いぬ」といいながら得意げに母親を振り返りました。「僕が先に見つけたんやで」の感情がありありと分かります。大好きなお母さんに知らせたかったのです。
母親は、教育的指導が優先していたのか、家で色彩の指導をしていたのか、「~~ちゃん、その犬は何色?」と質問しました。
折角の子どもの感動が伝わらない、母親の返答でした。
「本当、犬がおったん。良く気がついたね、お母さんも見たいわ」が、子どもとズレのない、子どもが言いたかったことにつながる返事、とお思う一コマでした。
臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一
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