自尊感情について この不足が不適応行動、問題行動の子どもに共通することが多い
過去の保護観察官、また現在保護司で非行臨床の経験がありますが、自尊感情、自己肯定感が極端に不足している事例によく出会います。「俺なんかどうなってもええんや」、「俺なんか生まれてこんかったらよかった」の自暴自棄もあります。そこまで行かなくても、何かにつけて自信なげで、自分が何かするにも人の顔色をうかがう子どもがおります。不登校の子どもにも共通(これだけが原因でないことはもちろんです)する一つです。
自尊感情は自己肯定感と言い換えられます。子どもに自尊感情がないというのは、他者から肯定的に見てもらえていないからです。「あほ、馬鹿、間抜け」と、しょっちゅう言われてはいないでしょうが、苦手なことや他者と比べて劣っていることを指摘されることが重なりますと、自信をなくして当然です。親は、子ども少しでよくしたい思いから、子どものマイナス面を改善したいものですから、プラス面よりマイナス面に目が行きます。
相談場面で、お母さんからのお話をひとしきり聞いたあと、「子どもさんのいい点はどんなところでしょうか、誉めてあげることはありますか」と、伺うことがあります。たいがい「先生、そんなもんありません」と、おっしゃいます。それはそうでしょうね。親から見て気になる点(すなわち、マイナス面)を何とかしたい思いで、相談に来られているわけです。
しかし、子どもは少しでも自尊感情・自己肯定感がないと自らの行動がとれないし、自己治癒力・変容力も働きません。自己肯定感を持てるのは、他者から誉められることが一番です。そこで、先ほどのような質問になるわけです。
子どもが90点、100点でないと親は誉めようとしません。これではなかなかプラスのメッセージが届きません。
私たちは、点数で言えば平均点で生活をしています。いつの場面でも90や100点ではありません。平均点、すなわち50や60点でOKなのです。
普通の点数でOKなのですから、普通に出来たことも誉める対象になるのです。そうすれば、プラスのメッセージ、すなわち誉めることが多くなります。日常生活の中で、「よくできたね、お母さん嬉しいよ」と、言える場面がきっと増えます。