いじめについて その4 「教育的配慮」 「不慮の事故」?
いじめが関係して、自殺という痛ましいことが続いています。 対応する関係者の言葉で気になることがあります。大津の事件で、女性教諭が指に大きなけがを負わされていました。いわば、傷害を負わされたわけです。学校側は、加害生徒への教育的配慮のもとに警察へ被害届を出しませんでしが、約3ヶ月たった先日に被害届を提出しました。
さて、教育的配慮とは何だったんでしょう。暴力をふるい相手にけがを負わしたも関わらず、自校の生徒だから、まだ未成年だから配慮、すなわち見過ごした、我慢した・・・ことなんでしょうか。
これは、間違いだと考えます。中学生といえども集団生活、社会生活をしています。集団生活、社会生活には当然ルール、決まり、法律があります。法律に触れる行為(今回は傷害)時には、当然それなりのペナルティがあります。被害届の元に、警察の取り調べから始まり、家庭裁判所の審判等々です。これらが社会の壁であり、大人の壁であるわけです。
教育的配慮とは、社会の壁、大人の壁を外してどうぞというのではなく、それに当たらせたあと、そのような厳しい状況の子どもに寄り添い、今後の歩みに踏み出せるように、励まし指針を与えることではないでしょうか。
高校生の自殺事件で、全校生徒への説明に「不慮の事故」の言葉を使いたいと、学校長が遺族に申し出たそうです。おそらく日常から「高校生はもう大人なのだから、責任を持つように」の類いの発信をしているはずです。ごまかしでなく真実を伝えるべきです。 「自殺」の言葉を聞く側の高校生への教育的配慮で「不慮の事故」にしたかったのでしょうか。自殺の言葉に傷つけられる生徒もいるでしょう。その心の傷への配慮が、心のケアであり、教育的配慮なのです。
臨床心理士、元スクールカウンセラー 鈴木隆一
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