親以外の5人の親、4番目は自然です。身近な癒やし機能は親、特に母性ですが、自然の癒やし機能もいうまでもありません。私の持論ですが、子どもの様々な問題の顕在化は、傷つけられる機会は世の中に一杯あるのに、癒やされ機能が格段に減少したためではないかと考えています。
例えば、近所のおっちゃん、おばちゃん、親類のおじさん、おばさん等との接点をはじめとする多様な人間関係が少なくなってきています。それにより、他者からいろいろなメッセージ、特にプラスのメッセージを受ける機会が減ってきています。そのうえ、癒やし機能の一つである自然との触れあいも極端に減っています。
スクールカウンセラー時代の不登校の臨床例ですが、中2の男子生徒はすぐ近くの裏山の木に登り、多くの時間を過ごしていました。今、放映中の大河ドラマの主人公も大きな木の枝に座るシーンがよくあります。
箱庭療法では、作品作りもさることながら、砂を手で触ること自体が、治癒に向けて大きな意味があるとされています。私の箱庭臨床でもそのことはよく体験しました。 また、園芸療法、犬との触れあいのセラピーもよく行われているところです。
自然とは、田舎や遠方に出かけなくても、身近にも土、砂、水等があります。朝日や夕日、お月様、お星様を見たり、そよ風の感触も、内なる自然性を活性化させ、人間性を取り戻させます。
最後の5番目は、ガキ大将です。小学校では、異年齢集団、縦割り集団のいい方で、意図的にグループ作り遊ばせます。年長の子どもがリーダーになりグループを統率するのです。
私は、大阪近郊で小学校時代を過ごしました。下校後外で遊ぶのですが、中学校を卒業したばかりのお兄ちゃん、すなわちガキ大将の仕事帰りを皆で待ちわびていました。そのお兄ちゃんのリードの元遊び回っていました。幼い子どもには、ハンディをつけ、弱い者いじめをするものなら、お兄ちゃんの制裁が待っていました。遊び文化の伝承もできていました。
大人がいない子どもだけの世界で、集団のルールを学んでいたのです。
以上で、親以外の5人の親を紹介しました。「昔は良かった」式のないものねだりは、全く意味がありません。これら5人の機能が減ってきているため、子育て現役の親御さんは、減って分まで負担しなければならず、子育て困難な時代になったと考えます。 そうであるなら、5人の親現代版を機能させる必要があります。
子育て講演会でこの話をしますと、フロアから毎夏数家族でキャンプに行くグループや、PTAで仲良くなったグループ、子どものお習いごとで知り合ったグループ等で、家族ぐるみでつきあい活動すると、紹介される若いお母さんたちがいます。
親類との接点も減少し、いくら地域の教育力と叫んでも、地域社会そのもの結びつきが少なくなっています。ないものねだりでなく、昔は良かったでもなく、今の時代に合った結びつきと5人の親が必要です。
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臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一