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一緒に子育て 53 発達障害についてその1 非行・犯罪との関係

学校教育でも、従来の名称から特別支援教育になって随分と年月が経ちました。この名称の変化は、発達障害の児童生徒を支援出来やすくするためです。その前後から、発達障害の理解促進の様々な手段取られてきました。従いまして、当初から比べればその理解も進んできましたが、まだまだ誤解や偏見も見受けられます。

その一つが、非行や犯罪との関係です、最近は新聞の事件報道でアスペルガーや発達障害の大きな見出しはなくなりましたが、以前はそうではありませんでした。我が子が小学校入学する時「あの○○事件と起こした子と同じですね」、と言われ悩んだり、自分の子どもも大きくなったら犯罪者になりはしないか、と心配になった保護者の方々がおられました。

先日、発達障害に理解に関する講演会に招かれました。フロアからの質問で非行との関係を聞かれました。私は、保護司をしておりまして、家庭裁判所で保護観察の処分を受けた子どもや、少年院仮退院をした子どもと付き合うことがあります。多くの対象者の中で、過去2例発達障害の事例がありました。

相当以前に良好解除で終了したケースを、多少アレンジして説明しました。担当時は、中学校卒業した時でした。男子でしたが、3年生の時、家出外泊、万引きををくり返し少年院送致の処分を受けました。彼が、発達障害と分かったのは、警察に捕まり鑑別所に収容された時でした。鑑別所では専門家が心理判定等をしますので、その時にアスペルガーと診断されました。

と言うことは、それまでアスペルガーと分からず、家族も周り、特に小中学校時代の担任も何の配慮もなく彼と付き合っていたのでした。発達障害の子どもたちとの付き合いで「本人が変わるのでなく、先ず周りが変わらなければならない」、と言われる言葉があるくらいです。

彼は、小中学校時代、家庭や学校でどれぐらい暮らし辛かったでしょうか。叱責や、注意ばっかりではなかったでしょうか。「何処にも居場所がなかった」の言葉通りだった思います。

家にも学校にも居場所がなく、居場所を求め深夜徘徊をくり返したと思います。少年院在院中の面接でのやりとり、彼からの手紙等にも明らかに「字義通り」解釈するという、彼ら特有のコミュニケーションが顕著でした。そのことからも、過去に相当困難なコミュニケーションの場面をくり返し、「分からない」 、「分かってもらえない」ことが多かったことが分かります。

仮退院を迎えるに当たって、引受人の保護者には、丁寧に彼のことを説明しました。幸い知的には高い能力を持っており、高校の成績はクラスでトップレベルでした。私はそのことをいつも高く評価し、いわゆる自己肯定感を高めることに努めました。

一番気になる学校での友人関係のことを質問しました。「適当に付き合っている」「深い話題には入らない」、との返事でした。融通が利かない、要領が悪い彼ら特有の持ち味で、友人関係も困ることが多いですが、この返事には感心しました。アスペルガーの基本は除去できないにしても、自分に自信が持てれば、このように適当に処することが出来るのです。

私は、彼の非行傾向は二次障害と理解します。もし、幼い頃から周りが配慮し、得意な面を伸ばし、困った場面ではほんの少しのサポートがあれば、集団生活、家族生活にもそれなりに適応していたものと思います。

元々持っていたハンディに加え、二次的に問題を起こさないようにするのは、とても大事なことです。


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