一緒に子育て65で、子どもが自然と触れ合うためには、周りの大人のあり方が大事だと述べました。
今回は、私がスクールカウンセラー時代にお目にかかった、ある保護者の方について述べます。周りに里山が広がる自然豊かな所で育ち生活されていました。子どもさんのことで私の元に来られました。話が一段落したとき、ご自分の子ども時代のことを思い出され、次のようにおっしゃいました。「不登校気味の中学生の頃、学校に行くのが嫌で近くの山に入り、木登りで時間を過ごしていた」、とのことでした。その話し方、表情は大変穏やかな感じを受けました。
この方の性格傾向として、一概には言えませんがお話ししている中で、ナイーブで大勢の中で過ごすのが苦手な感じを受けました。言わば、多人数の中では「傷つきやすい」、といえます。カウンセリングの世界にいますと、「人は人によって傷つき、人によって癒やされる」ことを実感しますが、「人は人によって傷つき、自然の中で癒やされる」ことをこの方から学びました。お話を聞いていて、一人で山や木に溶け込んでいるかのような感じを受けました。
私たちは、山や海、川に出かけます。その時、何をするでもなくふっと瞬間的に自然に溶け込む感じをする時があります。私の体験では、前後に人が見当たらない山道を歩いている時、海に潜り身体が浮き上がらないように、岩をつかんで周りを見ている時に、そのような感じをしました。そのシーンを思い出しますと気持ちが安らいできます。
仲間と大勢で出かけて、海遊び・川遊びもそれはそれで大変楽しいものです。しかし、溶け込む、触れあう実感は、やはり静かな雰囲気でしか味わえないのではないでしょうか。家族で子どもさんを連れて海、山に行った時そのようなワンシーンを作るのも如何でしょうか。
人それぞれの体験の中で、気持ちが安らぐ思い出があるでしょうが、自然との触れあいもその一つではないです。
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臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一