発達障がい児のことが注目され、相当年数経っています。教育でも福祉でもそれ以前と比べて格段に手立てがなされています。私も教育や保育の場で研修会の講師をよく務めますが、発達障がいのことが多くなっています。それだけ関心が深く、該当の子どもたちへの取り組みも真剣に考えられるようになってきたことは、喜ばしいことだと思っています。
先日、次のような相談を受けました。小学校1年生発達障がい傾向男子の子どもさんですが、音楽の授業に立ち歩くということでした。お母さんからの相談でした。授業中、他児が座って学習しているのに立ち歩くのは大変目立って、お母さんもお困りの様子がありありでした。
状況を詳しくお聞きしました。音楽の授業で先生がピアノ演奏やモデルで楽器を演奏している時は静かに聞いているが、子どもたちが演奏し始めると、奇声を上げて嫌がる様子を示して、最後には立ち歩くとのことでした。
発達障がいの子どもたちの多くに、感覚の過敏性があります。このことは通常よくいわれの社会性の障がいコミュニケーションの障害、想像性の障がいほど注目はされていませんが、実際の生活場面では、この過敏性で大変困っていることをよく見受けられます。
この子どもさんも聴覚の過敏性があり、秩序だった音(先生のモデルの演奏)なら聞くが、子どもたちの楽器演奏は雑音・騒音に聞こえ、本人の我慢の限界を超えていると考えられます。定型発達の子どもや我々なら我慢の範囲内ということが考えられますが、それを越えているのです。
私は、そのお母さんに、その時は教室外での適当な場所を用意して、そこに逃げ込むことをアドバイスしました。担当の先生の了解が要りますが、このように特別な措置もあってもいいのではないかと考えます。
5月21日に放映されたNHKスペシャルで、大人の当事者(発達障がい)の話がありました。子どもの頃、教室や街頭の騒音は、時には耳をドリルでえぐられるようだと話されていました。そのために、吐き気や頭痛さえもするそうです。
私たちは、そのような特有な感覚の過敏性に注目する必要があると思います。その配慮が発達障がい児・者の困り感を少しでも軽減できるものと考えます。
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臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一
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