ある知人から相談がありました。子どもさんに軽い障害があり、そのこである相談機関に行ったところ、箱庭に作品作りを勧められ、子どもさんが箱庭の作品を作りました。それを見た相談員さんが、問題があるような発言をされたので、母親としてとても気になるとのことでした。箱庭療法は治療機関、相談機関で良く用いられ、私も相談機関勤務の頃やスクールカウンセラー時代に必ず相談室に置いていました。
絵画療法同様、言葉でなく絵を描いたり、箱庭作品を作ることで内面を表現できますので、言語表出が苦手なクライエントさんには適切な表現手段です。箱庭はそれに加え、絵のように上手下手の差が出ませんので、多くの方が取り組みやすいです。
ところが、1回ないし数回の作品で制作者の内面を推し量るのはとても至難の業です。というより私は推し量ること自体、おこがましいと思います。子どもといえども、人の内面をそんな簡単に理解出来るでしょうか。デモンストレーションで象徴的に解釈するのとは大違いです。
相談をしてくれた方にもそのようにお伝えしました。経験では、定期的(例えば、1週間に1回)に継続して回数多く作品を作れば、なにがしかの傾向が読み取れることがあります。それも一定の方向で変化することがあります。そのような時には何らかの解釈も可能です。
しかし、作品を解釈するより保障された時間に、自由に作品を作ることそのものが、その人の自己治癒力を高めるので、解釈より作品を作ること自体を大事にしたいと思います。
心理療法の基本は、クライエントさんが何事にも束縛されることなく、自分の内面を表現することです。その表現の手段がいろいろあります。対面して言葉のやりとり、遊び、絵画や箱庭の作品等です。
私たちは、解釈よりより多くの、また深い内面を表出できるようにしたいものです。