先ず、前回の記事の中で、誤字がありましたので訂正いたします。赤ちゃん返りを退行現象ともいいますが、「退行」が「退校」になっていました。申し訳ありませんでした。
今回のテーマは、丁度今時の話題ではないでしょうか。学年で違いますが、進級・進学を控え進路のこと、将来のことを考える時期になっています。
スクールカウンセラー時代につきあった、不登校傾向の中学3年生男子生徒の状況を、今回の見出しにしました。彼は、もともと友人関係が苦手で、自分のクラスや同級生になじめず、というどころか無視される傾向にありました。それだけが不登校の背景ではありませんでしたが、学校生活自体に不安と恐れを抱いていました。
ところが、3年生になった途端、学年の集まりや、クラスでのホームルームでは、「1年後には中学校卒業後の大事な進路のことがあるので、今から確り考えるように」、との指導を何回も受けます。「中3になった途端、進路進路で憂鬱になる」が彼の悩みで、私への発言でした。
彼は、新しいクラスや友人に馴染み、今までと違う新しい学校生活を考えていたと思います。そのことで頭が一杯だったでしょう。進路という将来のことより、「今」のことを一生懸命に考え悩んでいたのです。
私たち大人は、子どもに「将来のために・・・・・を頑張るように」、「そんなことしとったら、将来ろくなことにならんへんで」、と励ましたり脅したりします。その言葉で奮起する子どもいますが、彼のように今・現在に不安と恐れを持っている子どもには、将来どころではありません。私たちの励ましが、焦りや不安を助長しマイナスに働きます。
建設的な将来を考えるためには、ある程度充足した今の生活が必要であることは、世代を超えて言えることです。不安を抱えやすい思春期の子どもには、特に必要です。
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臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一