いじめについては過去、このブログでも数回取り上げました.。今回は最近参加したいじめ対策に関する会合から感想を述べます。
最初に、「いじめをなくす」「いじめ撲滅」等のスローガンがあります。現在教育委員会等の公的見解では、ケンカもいじめに属する、と言われています。重篤な状況に陥らないためには、軽微なうちから対策をする必要があります。先程のスローガンに戻りますが、学校、職場等々の不特定多数の人間が集まる場所においては、人間関係のトラブル、諍い、反発、反感は避けられないもです。従いまして、集団生活の中ではいじめ的な人間関係はあって当然ではないでしょうか。
私は、スローガンとしてのいじめ撲滅は当然ですが、より大事なのは迅速な対応といじめ被害者への寄り添いだと思います。昔からいじめはあっとして見過ごす間違いが過去にありました。確かにその一面はありますが、現在は過去にあった「癒やしの人間関係」が少なくなったと思われます。諍いの人間関係、傷つく人間関係は増えた反面、癒やしの人間関係が減ったのではないでしょうか。例えば、祖父母や叔父伯母の存在、また近所のおばちゃんの癒やし効果も減っています。
参加した会合でも当事者の中学生の声として、いじめ場面で被害者側を守る行動は、自分もいじめられる側になりはしないか、との心配でほとんど不可能とのことでした。今の中学生は「ええかっこ、目立つ行動」を嫌います。良く理解できる心境です。私は、中学校での講話で「その場面では介入や味方はできなくても、その場面が納まった後被害者の友だちに声をかけるのはできるやろ。自分がいじめられた後、味方がいることが分かれば、どんなに心強いか分かるやろ」と話します。この話には、うなずきが多いです。まさに、癒やしの人間関係です。
部活、特に運動部では叱咤激励か、指導か、いじめかの境の人間関係がよくあります。この場面でも先程の「癒やし効果」は有効です。特に部活指導者は、叱咤激励に強い子か、叱咤激励に傷つきやすい子なのかを良く見極め、部活終了後声かけをしてやる必要があります。傷ついている子にすれば、その一言はどんなに心強いことでしょう。
人間は、特に友だち関係に気を遣い、傷つきやすい思春期の子どもは、自分をよく見てくれている、味方をしてくれる他者の存在があれば、困難な状況を自分で克服もできるのです。
臨床心理士・元スクールカウンセラー 鈴 木 隆 一
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